屋根裏の街
手を伸ばせば指先が天井に触れる。二段ベッドの上段で私は木目だらけの天井を見つめていた。リサイクルショップで二千円だったこのベッドは継母の最初で最後のプレゼント。下段は物置として使っている。そしてベッドが置かれているこの空間も二階の角部屋の狭い物置。死んだお母さんの荷物を継母が全部この部屋に押し込んだ。私も一緒にね。以前私が使っていた六畳間は今継母が寝室として使っている。お父さんと継母が寝室を別にするようになったのはいつからだっただろう。

給食前の机拭きで、当番から布巾を使ってもらったことがない。いつも床拭き用の雑巾だった。教室の後ろの掲示板に貼ってあるクラスの集合写真の私の顔には無数の穴が空いてる。画鋲の穴だ。隅っこで目立たないように遠慮がちに写っているのに、あれじゃまるで目立つ。そして反対側の隅っこには、痩せぎすで目だけがぎょろぎょろしている梶田が、陰湿にも両乳首に画鋲の穴を空けられて微笑んでいた。梶田は休み時間にどこかの宗教雑誌を読んでいるような、いかにもな感じの男子だ。3年4組は私と梶田のいじめを中心に回っていた。

「二人、デキとるんやろ」
そんなふうに言われても、私は力なく笑うことしか出来ない。梶田も同じで、見ててイライラするけど、こういうのって悔しくても言い返せない。かっこわるいって分かっていてもどうすることも出来ないから、はいはい、って強がって堪えるんだよね。

何度も死のうと思った。あれだよ、リストカットする奴は本当に死のうなんて思っていない。継母がそうだった。私があまりに出来の悪い娘だから、ヒステリーを起こしてすぐに手首を切るんだけど、一通り見せつけたら満足するんだ。私がいちいち悲しい目をして止めようとする反応に満足するようだ。ドSなのだ。

ぼんやりと天井を見つめては、毎日長すぎる一日を深く考える。考えても何も変わらずにまた同じ明日がやって来るのに。
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