屋根裏の街
しーんという音が聞こえるほど静まり返ったこの家。両親はまだ仕事中だし、ペットもいない。午後四時。ネズミだろうか。
手を伸ばして指先で天井に触れてみると、またガコンと妙な音がした。仰向けの姿勢から上半身を起こし、軽く天井を持ち上げてみた。……いとも簡単に持ち上がり、ボロっと板が外れると、少量の砂と共に私の顔面を直撃した。そしてそこには人が一人入れるくらいの穴が開いていた。外した板をベッドの隅に置いて再び天井を見上げると、曇り空が目に入った。
冷静にもまず思い付いたのが、欠陥住宅であるということ。床をビー玉が転がるような家なのだ。この間シロアリ駆除だとか言って業者が屋根裏を調べてたけれど、どうも怪しい。屋根がないことを何も指摘しなかったのだ。あれもインチキだったんだ。
薄暗い天井裏を想像していた私は、ポッカリと開いてる穴の向こうに広がる空に呆然とした。
恐る恐る穴の中に首を突っ込んでみると、見覚えのある町並みがあった。
すぐに首を引っ込めて考えてみた。そのまま倒れこみ、反動で倒れた板に額をぶちつけられ、痛みを堪えながら穴を見上げていた。一体どうなってしまったのだろう、私。
二十分くらいぼんやりて穴の上に広がる曇り空を見上げていると、ふと人の気配がした。その直後に薄汚い人間が穴から私を覗いた。お互いに「…わ」とすっ頓狂な声を発し、薄汚い痩せた男は穴を跨いで走り去って行った。穴から顔を出すとうちの前の通りをその男が走って行くのが見えた。この穴はうちの前のマンホールだった。
< 6 / 8 >

この作品をシェア

pagetop