屋根裏の街
私はハッとしてベッドからかけ降り階段を転げ降りミシミシとなる廊下を靴下で滑りそうになりながらドタバタと走り、お父さんの水虫だらけのスリッパを履いて慌ただしくドアをあけた。前から気になっていたドアノブがボロっと取れてしまった。それを玄関の下駄箱の上の棚に置いて、小さな細い針金が突き出ているだけになったドアを巻き爪気味の爪でカリカリとやりながらあけた。そこに待っていたのはすっきりと晴れた夕方の町並みだった。梅雨明けのカラッとした天気だ。天井裏に広がっていたどんよりと曇った空ではなかった。私は例のマンホールに近付いてみた。辺りを気にしながらしっかりと閉められている鉄の蓋をこじあけようとしたが、思いのほかネジが頑丈でびくともしない。私はマンホールの上に座り、そこから見える景色をよく見た。