だって、愛してる
『それで、会えへんくなってしもたんや。
なんや気の毒やな』
「そうね。夫婦やのに」
『天帝は意地悪な奴や』
「でも最初に仕事サボったんは二人よ。
信頼を裏切られたんやから、
当然って言えば当然の報いでしょ」
『二人は結婚生活にどっぷりハマって
仕事せんくなってしもたんやろ?』
「うん」
『しゃあないわ。好きな人と結ばれて、
ずっと一緒におられんねんから。
仕事かてほっぽりだしてまやろ』
『彦星と織姫って、案外人間臭いねんな』
そう言いながら、
彼はククッと小さく笑う。
そう言われてみればそう、なんやろうか。
今までそれこそ他人事で片付けてきたけど、
たしかに当たり前のことなのかもしらん。
機を織るよりも、牛を追うよりも、
遥かに楽しい時間を手に入れた。
何故それ以外を優先させなきゃいけない?