サンデー。

「姫、ご飯食べないの?」

キッチンから早苗が呼び掛けた。


「食べるよー。」

姫子はキッチンへ向かって大声で言う。

「じゃあ、いってきまーす。」

徹もキッチンに向かって言った。


「ほら、兄さん、遅れちゃうよ!」

姫子は徹の背中を押しながら、玄関へ向かった。

「姫ちゃんも早く準備しないと、学校遅れちゃうぞ。」


「大丈夫、大丈夫。」

姫子は徹の背中に話しかけた。

玄関まで来た時、徹の襟足のところでスーツの襟がめくれているのに気付いた。

「ちょっと待って。」

姫子が言い、徹は驚いたように立ち止まった。

「ここ、めくれてるよ。」

姫子は背の高い徹の襟足に手を伸ばし、スーツの襟を直した。
「よし!これで大丈夫。」


「・・ありがとう。姫ちゃん。」

徹は靴を履いて振り向くと、そうお礼を言った。


「ふふふ。なんか私が奥さんみたいだね。」


姫子がそう言った時、徹は急に目を反らし、言葉に詰まった。


姫子は徹を真っ直ぐに見た。



一瞬、





空気が止まった。




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