サンデー。
ドタドタと母が階段を上がってくる足音が聞こえる。
なぜか、和男は慌てて体を起こし、タバコの火を消した。
姫子の部屋は和男の部屋の隣だった。和男の部屋は階段を上がって突き当たりの左側にあり、その手前に姫子の部屋、姫子の部屋の向かいに広幸の部屋があった。
「姫!学校遅れるよ。起きなさい!」
母が姫子の部屋のドアを開けて叫んでいる。
おそらく姫子は、すぐには起きない。
いつも通りなら、起きるのは15分後だ。
もちろん母も、そんなことはわかっている。それを計算しての行動なのだ。
バタンッとドアの閉まる音がして、母は階段を降りていく。
朝の慌ただしい家族の様子が和男の部屋にも、微かに伝わってくるような気がした。
姉の早苗も起きて、母と一緒に朝食の支度をしているはずで、義兄の徹は7時過ぎには家を出るに違いない。
父は5時には起きて朝刊を読み続けているはずだ。
広幸はまだ寝ているだろう。この夏で野球部を引退してからは、朝練も無くなり、学校へ行く時間は遅くなった。