─不良が愛した女の子─



「亜朱佳ちゃん…?」



大樹が呼び掛ける。



「…なのに…っ」



亜朱佳ちゃんは悔しそうに
膝の上で拳を握りしめた。



「亜朱佳ちゃん…」



大樹は亜朱佳ちゃんの背中を擦った。



「…なのに…っ
莢架…ある日から
変わっちゃったんです…っ」



「……」



ある日から────……?



「莢架のお父さんが
亡くなったあの日から…。

お父さんが亡くなって
莢架は大きなショックを受けていたけど
『お父さんはあたしの心の中にいるから』
って言って、いつもの笑顔で
みんなに笑ってました。

でも…あたしにはわかってました。
莢架が強がってるって。
気が緩むと泣きそうな顔して、
でも…絶対に泣かないんです…」



莢架…



きっと強がることを覚えたのは
この頃からだったんだろうな…












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