─不良が愛した女の子─
「…あのね、
あたしも前までは幸せだった。
普通に家族でご飯を食べて、
朝と夜を迎えて。
なのに…なのに変わっちゃったの。
お父さんが交通事故で死んでから──…ッ」
そう喋り出した莢架の目からは
すでにたくさんの涙が流れていて
立ち止まると制服の袖でゴシ…と拭いた。
そうやっていくつの夜を過ごしたのか。
自分の涙を拭ってくれる人はいなくて。
いつも泣いては自分で拭いてたんだろ?
だから強がることが
普通になってしまったんだ。