─不良が愛した女の子─



「…あのね、
あたしも前までは幸せだった。
普通に家族でご飯を食べて、
朝と夜を迎えて。
なのに…なのに変わっちゃったの。
お父さんが交通事故で死んでから──…ッ」



そう喋り出した莢架の目からは
すでにたくさんの涙が流れていて
立ち止まると制服の袖でゴシ…と拭いた。



そうやっていくつの夜を過ごしたのか。



自分の涙を拭ってくれる人はいなくて。



いつも泣いては自分で拭いてたんだろ?



だから強がることが
普通になってしまったんだ。











< 62 / 201 >

この作品をシェア

pagetop