─不良が愛した女の子─
「お父さんが交通事故で死んで
お母さんは一時的な鬱になったけど
あたしに2人で頑張って行こうって
言ってくれたの。
莢架のためなら何でもするって
言ってくれたの。
それからお母さんはあたしを
高校へ行かせるために
水商売を始めた。
毎日毎日、お母さんは帰ってくると
直ぐに寝るようになった。
"お母さん、疲れてるんだろうな"
ってあたしは思ったから
できるだけ負担にならないように
バイトも始めたの」
そう言うとまた涙を拭く莢架。
「あたしもバイトだし
お母さんは直ぐに寝るしで
話なんてまったくしなくなった。
起きると朝ごはんだけがあって
それだけであたしは嬉しかったんだ。
でもある日だけ朝ごはんが
作ってない日が一日だけあったの。
不思議には思ったけど
たいして気には止めなかった。
学校に行く準備をして
家を出ようとしたら
お母さんの靴がまだあって
お母さんの寝室を覗いてみたら…
いたの…アイツが。
アイツがお母さんに馬乗りになって
お母さんを殴ってた」
莢架の目からは涙がでなくなって
変わりに瞳は怒りに満ちていた。