愛してください
彼氏、いたんだ…。
「ひかりー、今日こそは家入れてって。」
甘えてるのか、強制的に入ろうとしているのか分からない声で言った。
あたしは絶対に家に入れない。
バカな母親とうるさい父親がいるから。
「やだよ。」
「なんで?」
「とにかく、無理。」
青になった信号を渡ろうとしたら、動かない眞弘のせいで立ち止まった。
眞弘の顔を覗き込むと、手を引っ張られて横断歩道を足早に渡る。
チカチカになった信号を背に、眞弘は繋いだ手を離してしまった。
「ひかり、俺のこと信用してないわけ?」
眞弘はいつになく声が低かった。
「信用、してるよ。」
「なのに家に入れられない?」
「違う、そういう意味じゃなくて眞弘には知ってほしくないこともあるの。」
「俺に教えられないことがあるわけ。」
「もう、眞弘分かってよ。」