愛してください


彼氏、いたんだ…。

「ひかりー、今日こそは家入れてって。」

甘えてるのか、強制的に入ろうとしているのか分からない声で言った。

あたしは絶対に家に入れない。
バカな母親とうるさい父親がいるから。

「やだよ。」

「なんで?」

「とにかく、無理。」

青になった信号を渡ろうとしたら、動かない眞弘のせいで立ち止まった。

眞弘の顔を覗き込むと、手を引っ張られて横断歩道を足早に渡る。

チカチカになった信号を背に、眞弘は繋いだ手を離してしまった。

「ひかり、俺のこと信用してないわけ?」

眞弘はいつになく声が低かった。

「信用、してるよ。」

「なのに家に入れられない?」

「違う、そういう意味じゃなくて眞弘には知ってほしくないこともあるの。」

「俺に教えられないことがあるわけ。」

「もう、眞弘分かってよ。」

< 4 / 5 >

この作品をシェア

pagetop