私しか知らない秘密のあなた
朝、僕はいつもより早く家を出た。
生徒会の仕事でアンケート募集のチラシを配らないといけないからだ。
チラシを配られ僕は気合いを入れ直した。
だって………。
「はる様!私にチラシ下さい!!」
「私にも!」
「ちょっと!!はる様のチラシは全てアタシのものよ!!」
……凄い…。
はる先輩(生徒会長)の周りには、女子達が群がり先輩のチラシを争っている。
僕は、群がる女子に紛れながらチラシを配った。
はる先輩のチラシは飛ぶ様に無くなり、僕のチラシはずっと残ったままだった。
ふぅ。疲れた。
僕は、女子の群れの中から飛び出し、離れたところでチラシを配ろうとした。
「ご協力お願いします。」
言ってみたけど、全然こっちを向いてくれない。
はぁー。駄目だこりゃ。
そう思って、顔を上げた時………。
視線がふとあってしまった。
彼女だ。
彼女は、気まずそうにしながら僕に近づいて来て「おはよう」っと小さな声で言った。
でも僕は、返事を返さなかった。しかも、彼女を見ないフリして、仕事に集中した。
無理だよ。素直に「おはよう」だなんて言えないよ。
言っちゃったら、
悲しくなるから。
すると頭の上に、大きくて優しい手が乗った。
「由♪お疲れ様。もう終わりだぞ。どうかしたのか?」
はる先輩だ。
「い、いえ。何でもありません。」
「そっ。ぼーっとし過ぎると、遅刻するぞ♪」
そう言って、はる先輩は走って行った。
僕も行かないと…。
僕は教室に急いだ。