窓に灯
強くなった鼓動、手に滲む嫌な汗。
落ち着け、俺。
前にも浮気を疑って失敗したことがあったじゃないか。
自己暗示をかけるように何度も何度もそう言い聞かせる。
もしかしたらと思って携帯を確認してみても、恵里からの連絡はない。
一緒に暮らし始めてもなお、俺は恵里のことになると冷静さを失う癖が治らないらしい。
「ごめん、俺、二次会パス」
「ええっ?」
「マジごめん! ちょっと用事できた」
謝罪もそこそこに走り出す。
そしてタクシーに乗った。
約10分後、俺たちの住むアパートに到着。
部屋に灯りはついていなかった。
不安になって電話をかけてみる。
「――電波の届かない場所におられるか、電源が入っていないため――」