窓に灯
疑心暗鬼
恵里が帰宅したときの第一声はこんな感じだ。
「ごめーん、遅くなっちゃった。歩の方が早かったね。合コン、盛り上がらなかったの?」
俺はその言葉を無視して返した。
「遅くなるなら連絡くらいしろよ」
俺は帰りが遅いこととその連絡がなかったことのみに照準を合わせる。
男のことはぐっとこらえて言わなかった。
今言えばきっと話がこじれる。
願わくば、恵里の方から話してほしい。
いや、やましいことがないならば話すべきなんだ。
「ごめんね。仕事してる間にケータイの充電切れちゃってさぁ」
それは嘘ではないらしい。
恵里はすぐに充電器を挿し、メールの確認をしていた。
「こんな時間まで何してたの?」
さあ、恵里。
俺を安心させてくれ。