窓に灯
「ほら、パン焼けたよ」
ダブルベッドから出ることができない俺を、恵里が無理やりテーブルに引っ張っていく。
スカルプで武装された長い爪が俺の腕に少し食い込み、その軽い痛みで俺はやっとスイッチがONになった。
テーブルには目玉焼きと、食パンと、コーヒー。
目玉焼きは黄身をカチカチに固め、食パンは少しこんがり、コーヒーは砂糖少なめにミルクは多め。
俺の好みは、全て彼女にインプットされている。
これを準備した恵里は、もう着替えと化粧が完了していた。
あとは髪を器用にスタイリングするだけだ。
「スプレーが舞うから、食事の前に髪は巻かない」
というポリシーは彼女の思いやり。
ギャルショップ店員である恵里は、見た目はいい加減そうだが、中身は意外としっかりものだ。
「いただきます」
「はーい」
今では彼女というより、母親のようである。