恋せよ乙女
「ダメですよ、氷室さん。こういうときは、多少無理してでも食べないと。
あたし、適当に色々買ってきましたから、何か食べましょう?ゼリーとかありますけど、何が…」
「ねぇ、紫音。」
「え…、はい?」
話しながら再びキッチンに向かいかけていた足は、意外にもハッキリと聞こえた氷室さんの声で停止する。
その場で振り向けば、こっちを向いていた氷室さんと、バッチリ視線が絡んで。
「キミ…、いつまでここにいるつもりだい?色々やらせておいて悪いけど、もう帰っていいよ。」
放たれた言葉に、ビクッと肩が揺れたのが自分でもわかった。
―――でも。
「こんな弱った病人を一人っきりにしてなんて帰れません。」
お節介だと言われても構わない。
ただ、こんな具合悪い人を、放ってなんておけないでしょ?
氷室さんだって、つい先日、同じことをあたしに言った。