恋せよ乙女

―――でも、その刹那。

聞こえてきた足音にふと手が止まる。何事かと振り向こうとしたけれど、そうすることはできなかった。

なぜならあたしは、後ろから氷室さんに何故か抱きしめられたから。

伝わってくる激しい動悸に、あたしの思考は一瞬、機能を停止した。


「え、あ、ちょ!?
ひ、氷室さん!?どうしたんですか?」

「………ごめん、紫音。
今の、七割くらい嘘だから。
―――だから、帰らない、で…」

「…へ?」

「…言い過ぎた、ごめん。」


彼らしからぬ言葉に、一層困惑を起こす頭の中。思わず間抜けな声を出してしまったじゃないか。

でも、“七割”って半端だな、本当に。
結局三割は本音ってことじゃん。

―――だけど今は、そんなことより…
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