恋せよ乙女
でも何だか、彼が離れた背中が妙に寂しくて。
病人にそんな風に思ってしまうあたしは、やはり少し変態なのかもしれないな、なんて、自分で思って苦笑する。
「……キミが買ってきてくれた、ゼリーでも食べたいな。」
でも。ベッドに向かい際、そうつぶやかれた彼の言葉に、思わず苦笑とは違う笑みが零れた。
いつもより弱々しく見える背中が、やけに愛しい。
「わかりましたー。持って行くので、静かに待っててください。」
だから今日はとりあえず、氷室さんが正常に戻るまで看病してあげよう。
こんな素直な氷室さん、学校ではきっと見られない。否、こんな氷室さんを知っているのは、あたしだけで十分だ。
…――あたしだけで、いい。