恋せよ乙女

「おい待て紫音。
何で氷室の風邪が俺のせいなんだ。しかも“馬鹿なの?”って……」

「えー。だってー、隼人がグロッキーなあたしを氷室さんに押しつけるからでしょー。だからあたしが昨日、氷室さんの様子を見に行ってきたんだよ。ただそれだけだってのに、何回も詮索してくるから、隼人は馬鹿なの?って聞いたのよ。」


隼人の問いに、皮肉を込めてそう答える。そして背を向け歩き出せば、聞こえてくる駆ける足音。まもなくしてすぐ、あたしの隣にまた隼人は並んだ。

―――そして、


「……いやいやいや。明らかにそれだけじゃねーだろ絶対。
様子見にしてはお前、昨日帰ってきたの結構遅かったぜ?」


再びかけられた問いに、立ち止まったのはあたしの方。

その刹那、ニヤリと口角を上げた隼人に、勘違いすんなと一発、ボディにパンチをくらわせる。

そして、このまま世奈に嫌われちゃえばいいのに、と、心の中で毒づいてやった。
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