恋せよ乙女

―――そして、


「………悪いけど、紫音はつれてくよ。」

「え?あぁ、おう。」


事態についていけていない隼人を置き去りに、ぎゅっと掴まれ、ずいずいと引かれていくあたしの腕。…って、えぇ?

いやいやいや、ちょっと待ってよ…。
あたしの意志は無視ですか。そしてどこに行くんですか。


「ひーむーろーさーん…?
一体どこへ…」

「煩いよ、紫音。黙って僕についてくれば、いずれわかるだろ。」

「……理不尽ですー。」


必死の問いかけも呆気なくあしらわれ、返ってきた理不尽な言葉にさすがのあたしも閉口する。

もー、昨日の“素直”な彼はどこに行っちゃったのよ。
その片鱗さえも見せない態度に、ほとほと驚いて…否、呆れてしまった。
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