恋せよ乙女

…まぁ、イヤかっていったらそうでもないんだけれど。むしろ、氷室さんと二人だなんてシチュエーション、嬉しいに決まってる。

思わず零れた笑みに、氷室さんの表情も少しだけ和らいだ。

―――そして。


「…あぁ、そうだ紫音。
昨日は助かったよ。ありがとう。あまりよく覚えてないんだけど、お礼をまだ言ってなかったよね。」


思い出すように紡がれた言葉と、向けられた優しい笑顔。
それらに、ほんわりと心が温かくなる。

でもその反面、氷室さんから言われた“ありがとう”に、少しだけ切ない気持ちになった。どうしてなのかは、よくわからないけれど。

胸が締め付けられるような、そんな感じ……
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