恋せよ乙女

「…ねぇ、紫音。キミって本当に人の話聞かないよね。」

「いや、聞いてます。ただ、例のごとくシカトしてるだけです。氷室さんがおっしゃった通りに。」

「そっちの方がタチ悪いよ。」


ぼそっとそう零し、再び盛大なため息をついた氷室さんを見て、少しだけ、ほんの少しだけだけど、申し訳ないような気持ちがわいてきて。


「………迷惑、ですか?」

「うん、迷惑。」


恐る恐る尋ねた問いに、ズバッと切り捨てるような答え。

グサッと胸に突き刺さるようなものを感じながらも、机に向き合い定位置に座る氷室さんに視線を向ければ、バッチリ視線が絡んでしまって。


「何?」


そう問われたあたしは、ゆっくりと口を開いた。
< 12 / 396 >

この作品をシェア

pagetop