恋せよ乙女

視線が絡み合うとほぼ同時に、氷室さんの形のいい唇が、ゆっくりと言葉を紡ぐ。


「……――――よ。」

「…え?」


……聞こえなかった、訳ではない。

むしろ、よく聞こえていたその言葉。
なのに聞き返したのは、あまりにもその言葉が彼に似合わなかったから……否、もう一度しっかり、彼の言葉を聞きたかったから。

そんなあたしはきっと、誰よりも性格が悪いだろう。

プライドの高い氷室さんに、二回もガラじゃない言葉を紡がせるのだから――…
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