恋せよ乙女

「前に僕、好きとかよくわからないって、キミに言ったことがあるだろ。覚えてるかい。」

「……はい。」


そうだ、確か……、あたしが熱出して思考がおかしくなったときじゃなかったかな。

そう思い返しながら、そのときの情景が鮮明に蘇る。ついでに思い出したそのとき交わされた言葉を噛み締めながら、氷室さんの次の言葉を待った。


「それは、今も変わりない。未だにそんな気持ち、僕にはよく理解できない。」


ゆっくりと紡がれる言葉を、一つずつ理解して整理していく。

“今も変わりない”
“よく理解できない”

チクチクと胸を刺す痛みがない訳ではないけれど、いいんだ。まだ、今は。
今すぐとはいかなくたって、また頑張ればいい。現に今だって、あたしの頑張りは少しでも報われたんだから。
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