恋せよ乙女
でもそんな心意気とは裏腹に、思わず下げてしまった視線。ハンカチを握りしめる右手に、ぎゅっと力を込めた。
――刹那、
「でもさ、紫音。僕、気づいたんだ。」
何に?とは尋ねなかったけれど。
思いがけない切り返しを不審に思って見上げれば、あたしを見返す優しい笑顔、不意に握られた右手…。
それらに、どくん、と小さく胸が鳴る。
―――そして、
「たぶん、きっと。僕は紫音のことが好きなんだって、そう気がついた。」
紡がれた言葉は、あたしが何よりも望んでいたもの。
予想外の告白に言葉は詰まり、代わりにただ、ひたすらに、涙が溢れた。