恋せよ乙女
「…あれ、教室戻んの?」
「んぁ? 紫音、お前が今さっき俺に戻れって言ったんだろ。」
「いや、そうだけどさ。」
そうだけど、こうも簡単に戻ってくれるなんて思ってなかったのよ。
目線だけ上げ、胸元で小さく手を振る世奈に大きく手を振り返した隼人は、あたしたちの教室をあとにした。
「……あいつ、何だったの。」
「隼人は隼人なりに、いとこを心配してるのよ。ほら、紫音は感情の起伏激しいし?猪突猛進型だし?」
「いや、それは自覚してるけど。」
思わずつぶやいていたあたしの独り言に、含み笑いをたたえながら答えてくれた世奈。
笑顔で隼人の名前を出す世奈に、この二人の関係も今は順調なんだなと勝手に推測した。