恋せよ乙女
「ありがとうございます。
そんな優しい氷室さんがやっぱり好きですっ!」
「…早速、つまみ出してほしい?」
「いえ、静かにしてます。」
もう、氷室さんに好きだって言うのは口癖化してしまったのかもしれないな、なんて、静かに書類に目を通す氷室さんを見て思った。
本気で、心からの想いなのに、こんなにも簡単に口にしてしまうから、いつまで経っても氷室さんがマトモに聞いてくれないのかもしれない。
嫌いなら、嫌いでもいい。
好きになってもらえるように努力するから。
好きなら好きで、それ以上のことはない。
今までのあたしが、無駄じゃなかったと思えるから。
ただ黙々と仕事に励む氷室さんの表情からは、何にも読みとれなくて。少しでも見込みはあるのか、丸っきり無理なのか、それさえもわからない。
その無表情の下に、氷室さんは何を思っているのだろう。