恋せよ乙女
だって、ついこの前までは世奈、「隼人と別れる!」とか超騒いでたし。隼人もそんな世奈にマジで焦ってた。
まぁ、この二人がそう簡単に別れるはずはないと思ってはいたけれど。親友といとこ、二人の恋が上手くいっているのに、嬉しくない訳が無い。
「…え、ちょ。何笑ってんのよ、紫音。」
「ふふっ。何でもなーい。」
自然と緩むあたしの頬に、世奈もつられるように笑みを零した。
「加藤ー。」
「ん?」
突如、背後から聞こえたあたしの苗字。一体何事かと首だけ後ろへ向ければ、どうやらその声の主はクラスメートの男子のようで。
「加藤ー、ちょっと来てくれ。」
彼…、高橋君は、教室の出入口に立ちながら、再びあたしの苗字を呼んだ。