恋せよ乙女
その笑顔にさらに惚れた、だなんて、さすがにこの場では言わないけれど。だって、また呆れられるのは目に見えてるし。
だから黙って氷室さんの次の言葉を待つことにして、口を噤んで彼を見つめる。
「ふぅん。でも悪いけど、デートって訳じゃないんだ。だけど明日一日、僕に付き合ってくれるかい?」
……あぁ、やっぱり。
氷室さんの放った一言で、デートをするという少しの期待は脆くも崩れ去った。でも、“やっぱり”とか思ってるあたり、妙に納得してる自分もいて。
若干落ち込んだのは事実だけど、目の前の氷室さんの不安げな窺うような表情に、何も言えなくなってしまった。
…でも、考え方を変えれば明日一日、氷室さんと一緒に居られる訳でしょ?
あたしがその申し出を断れるはずが…否、断るはずがない。