恋せよ乙女
「……音。…紫音ってば!」
「え?あ、はい!」
呼びかけられた声にふと我に返れば、目に映るのは氷室さんの顔のドアップ。
「ぅわおっ!? 何ですか、近いですよ氷室さん!」
あたしの無駄なオーバーリアクションにクスリと笑みを零すと、あたしとの間を少しとりながら氷室さんは口を開いた。
「何ですか、じゃないよ。何回呼んだと思ってるの?そろそろ教室行かなきゃ、HRに遅れるよ。」
発された言葉に、えっ?と思い、壁に掛けられた大きな時計に視線を移せば、確かにそろそろヤバ気な時間で。
ってかあたし、どんだけぼーっとしてたのよ…。せっかく作り出した、二人きりの時間がー…
一人悶々と頭を抱えたあたしを見て、氷室さんはまた控えめな笑みを零した。