恋せよ乙女
“キミを取り巻く環境は何一つ変わっていない”
確かに、それはそうかもしれないけれど。
だけど――…。
だけど、やっぱり違う。
何よりも大きな変化が、あたしにはあった。
「……変わりましたよ、氷室さん。」
「?…何が。」
「ほら、今だって。
あたしが普通に、拒否られずに氷室さんと一緒に居られるようになったこと、これって凄い変化だと思いません?」
あたしだけが追い掛ける、そうじゃなくて。
あたしが追い掛けて、それに答えてくれるようになった、そんな変化。
数週間前は無理だったけれど、今は手を伸ばせば届く距離に、いつだって氷室さんは居る。あたしの独りよがりなんかじゃなく、れっきとした想いの共有を携えて。
「………確かに、そうかもね。」
氷室さんが小さく呟いた声に、あたしは改めてそう実感した。