恋せよ乙女

「だって、会長には聞きにくいでしょ?さすがに……。」


さすがに?
…――さすがにって、何?

ただ本当にわからないのか、あたしがわかろうとしないだけなのか、鈴木さんの真意が汲み取れなくて気持ち悪い。
曖昧な言葉は、心が痛いだけだ。

どくん、どくん、と大きく脈打つ胸が苦しくて、右手でギュッと胸元を握りしめる。

―――そして、


「さすがに、何?……もしかして、鈴木さんが“元カノ”だから?それとも、まだ未練があることを、氷室さんに悟られたくないから?」


真意を知るため投げかけた、鈴木さんへの問い。その核心をつく一言に、再びあたしに向けられた彼女の瞳が、微かに揺らいだ。

そして心の奥底で確信する、想い。
彼女はまだ、氷室さんが好きなのだ、と。
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