恋せよ乙女

「はや、と………?」

「……怪我は、ねぇみたいだな。」


そっと伸びてきた隼人の右手は、未だぽろぽろと涙を伝わせるあたしの頬に触れる。

前夜祭はどうしたの、とか、何でここに居るのがわかったの、とか。聞きたいことはたくさんあったけれど、どれも言葉にはならなくて。
伝わってくるあたたかな温もりに、余計涙が止まらなくなった。


「ほら、いつまでもそんな顔してんじゃねぇよ。」


そして、そんな風に言いながらあたしに向けられる優しい微笑み。

――でも。

隼人が来てくれて、外に出られて。
確かに安心したのは事実だけれど。


「どうして、隼人なの……?」


別に、隼人がダメだった訳ではない。
ただ、どうして。どうして氷室さんが来てくれないの?

噛み合わない会話の末、そう何気なく問い掛けたあたしに、隼人は笑みを消して眉間にシワを寄せた。
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