恋せよ乙女
そんな隼人を、ぼやける視界に必死で映し、ただひたすらに見つめる。
その状況に堪えられなくなったのか、バツが悪そうに視線を逸らした隼人は、小さく息を吐いて口を開いた。
「…あいつは、ここには来ねぇよ。」
「え…?」
「今頃きっと、前夜祭で生徒会の仕事してるんじゃねぇの?紫音がこんな目に遭ってることさえ、多分あいつは知らねぇよ。」
紡がれた言葉に、ぐさりと心に何かが刺さったような感じがした。ドキンと大きく鳴った胸が、鼓動を刻む度に痛む。
氷室さんはここには来ない。
あたしを助けには来てくれない。
おまけに今は、鈴木さんと一緒に仕事をしているなんて。
「……悪かったな、来たのが氷室じゃなく、俺で。」
別に、隼人が謝る必要はないけれど。
再び押し寄せてきた焦燥感と隼人から聞かされた事実に、クラッと一瞬視界が揺れた。