恋せよ乙女
―――そして。
「……資材置場の前で、紫音を抱きしめる隼人を、だよ。」
発された言葉に、脳裏にまざまざと浮かび上がってきた昨日の一連の出来事。
…――ああ、あの時、あの瞬間、世奈はあたし達を見ていたのか。
「それは……、」
「それは、何?あの状況を、どう説明するの。」
相変わらず疑心に揺らいだままあたしに向けられる世奈の瞳。
何故か動揺してしまったあたしに構わず、世奈は言及してくるけれど。説明するも何も、何一つ疚しいことなど無いのだ。
ただ、落ち着くように抱きしめてもらっただけ。
ただそれだけなのに。
反論することもままならない雰囲気に、あたしは出しかけた言葉を飲み込んだ。