恋せよ乙女
そして、見開かれた“会長さん”の瞳があたしを見返す。
それだけじゃなく、世奈も隼人も信じられないとでもいうような表情を浮かべている。
……でも、だけど、どうして?
だって、あたしはこの人を 知 ら な い 。
ただそれだけなのに、どうしてそんな目であたしを見るの。
「……ねえ、紫音。何、言ってるの?冗談よね?」
引き攣った笑みを浮かべ、恐る恐る問い掛けてきた世奈に、小さく首を横に振る。だっていくらあたしでも、自分がこんな状況で、冗談なんて言わない。
「世奈こそ、何言ってんの? 生徒会選挙とか、そういうのでは見たかもしれないけど、あたしが“会長”に直接会うのは初めてでしょ? 第一、クラスも違うしあたしが委員会に所属してる訳でも無いのに、生徒会長と接点がある訳無いじゃん。」
苦笑を含めてそう言えば、会長の瞳が微かに、でも確かに困惑で揺れた。