恋せよ乙女

そして、見開かれた“会長さん”の瞳があたしを見返す。
それだけじゃなく、世奈も隼人も信じられないとでもいうような表情を浮かべている。

……でも、だけど、どうして?
だって、あたしはこの人を 知 ら な い 。
ただそれだけなのに、どうしてそんな目であたしを見るの。


「……ねえ、紫音。何、言ってるの?冗談よね?」


引き攣った笑みを浮かべ、恐る恐る問い掛けてきた世奈に、小さく首を横に振る。だっていくらあたしでも、自分がこんな状況で、冗談なんて言わない。


「世奈こそ、何言ってんの? 生徒会選挙とか、そういうのでは見たかもしれないけど、あたしが“会長”に直接会うのは初めてでしょ? 第一、クラスも違うしあたしが委員会に所属してる訳でも無いのに、生徒会長と接点がある訳無いじゃん。」


苦笑を含めてそう言えば、会長の瞳が微かに、でも確かに困惑で揺れた。
< 267 / 396 >

この作品をシェア

pagetop