恋せよ乙女

「…………あ。」

「? どうした?」

「あ、いや、ね?弁当箱、教室に忘れた。」


あはは、と苦笑を零すあたしに、さっき同様、世奈から返ってくるのは盛大なため息。

そして、呆れたように浮かべられた笑みが、ゆっくりとあたしに向けられた。


「はぁ……。置きっぱにしたら、食べ残した中身は絶対明日には腐ってるよ。いや、むしろカビてるかも。」

「だよねえ。…仕方ないからとってくるわ、めんどくさいけど。だから世奈、先に行ってて。」

「うん、了解。校門で待ってるー。」


世奈に小さく頷き、来た道を駆け戻る。
戻ってきた教室にはもう誰もおらず、案の定、忘れた弁当箱は机の横に掛けられていた。

そして弁当を手にした刹那、「……加藤さん。」、背後から、そう不意に掛けられた声に視線を向ける。

すると視線の先にいたのは、見覚えのない綺麗な女の子だった。
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