恋せよ乙女
┣*欠けた1ピース
欠落した記憶が寸分たりとも戻らないまま、何事もなかったように時間は過ぎていく。
でも、まるで習慣づいたように早めに登校したり、時間を持て余して仕方なく下校することから、あたしが何かを忘れていることは明白だった。
毎日、何か物足りない。
今までのあたしを満たしてくれていた何かが、今のあたしには無い。
恐らく…否、確実に、今のあたしにとって、何よりも大切なことを忘れてしまったのだ。
そして、世奈や隼人の態度、会長があたしに向ける視線から、忘れていることが会長に関わることだというのも、ある程度すると容易に予想がついた。
表には出さないけれど、思い出せない不安ともどかしさに、毎日押し潰されそうだった。