恋せよ乙女
―――刹那、
「……教えてあげるわ、私が。」
あたしをこの場に留めようとするかのように、凜として放たれた言葉。その言葉に、ピクリと肩を跳ねさせてしまったのが自分でもわかった。
思わずあたしが足を止めてしまったのを確認したのか、一呼吸置いて鈴木さんは続ける。
「あなただって、このままうやむやにするのは嫌でしょう?もしかしたらこのまま、一生思い出せないってことも、あるかもしれないし。」
勝手なことを言っている、そうは思いつつも、淡々と紡ぎ出される言葉に、確かに、とも思ってしまった。
“確かに”うやむやにするのは嫌だ。
“確かに”あたしは一生、このまま思い出せないかもしれない。
そんな思いが、渦巻いた。