恋せよ乙女
まだ思い出せてない何かを、もう少しで。
それらを思い出せれば、世奈と隼人が話していたことも、あたしと鈴木さんとの確執も、全て繋がるはずだ。
「……だけどね、」
頭痛の中、失われた記憶の奥深くを模索していた思考は、ぽそりと零された会長の声で現実へと引き戻された。
まじまじとあたしを見つめる瞳に、再び彼の声へと耳を傾けた。
「だけど、好きになるという気持ちを知った、今ならわかる。好きがわからない、そう言って半端な気持ちで、傷つけてしまった人がいるってことも。そのせいでキミにまで、辛い思いをさせてしまったってことも。」
……―――あたしに、辛い思いをさせた?
悲しそうに、そして、何かを後悔するように表情を歪めた会長。
でも、何だろう?
話の流れ的に、傷つけてしまったというのは鈴木さんのことだろうけれど。会長が悔やむほどのことが、あたしと鈴木さんとの間にあった?もしかして、階段から落ちたこと?
一層混乱を深めた脳内は、様々な気持ちと断片的な記憶が交錯した。