恋せよ乙女
“ふふっ。ごめんね、加藤さん。後で誰か助けに来させてあげるから、少しだけここに居てちょうだい。”
ここ……?
ここって…、あれ?資材置場……?
“どうして?…前にも言ったでしょ。あなたに恭君は渡さないって。あなたがウロウロしてると、凄く邪魔なのよ。”
…――ああ、そうだ。はっきり思い出した。
さっき世奈と隼人の会話に出てきたあたしが“閉じ込められた”という話、それは紛れも無くこのことであり、あたしは軟禁されたんだ、鈴木さんに。
彼女にとって、あたしは邪魔。
そんなことは、今のあたしでもわかっているけれど。まさかそんな、軟禁されるだなんて、あの時誰が予測できたっていうの。
脳裏に浮かび上がり、徐々に思い出されていく記憶は決して楽しいものじゃない。
薄暗くて肌寒い、外界と隔絶されたような空間。その中で一人ぼっち、隼人が来てくれるまでの数時間、誰も助けには来てくれなかった。
甦る恐怖と不安を押し隠すように、制服のスカートを強く握り締めた。