恋せよ乙女

――ああ。

そうだよ、あたし…。あの日は会長…否、氷室さんに謝りに行く途中だったんだ、確か。

“嘘つき”、そう言って傷つけて、拒絶して。あげくの果てに、彼に関する記憶まで忘れてしまったなんて。

本当に、一番辛い思いをして傷ついたのは、あたしじゃなく氷室さんなのに――…

そんな想いの傍ら、断片的で不明瞭だった記憶の全てが、徐々に一本の線に繋がっていく。

あたしがとにかく、氷室さんにアタックしまくっていたことも。

一緒に仕事して、送ってもらったことも。

あたしの風邪を看病してもらったことも。あたしが氷室さんの家まで様子を見に行ったことも。

生徒会の買い出しを兼ねて、氷室さんとデートしたことも。
氷室さんがあたしのために、大人気のケーキを予約してくれていたことも。

……生徒会室で目撃した、鈴木さんと氷室さんのことも。
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