恋せよ乙女
「嘘、つかれたし。あの人には色々借りがあるからさー。とりあえず二人で話そうかな、って。」
そう苦笑混じりで返せば、隼人は呆れたように大きなため息をついた。
「昔から、無駄に負けず嫌いだよな。」
「あはっ。それって、褒め言葉?」
「いやいや待て。今のをどう聞き間違えて褒め言葉になるんだ。」
「あたしの脳内変換をなめちゃいけない。」
「……何だ、それ。」
くだらない会話を交わしていると、あっという間に差し掛かった生徒玄関。オレンジに染まりかけた空を背景に、下駄箱に背を預けていた世奈を見つけ、あたしは大きく手を振った。
「世奈っ!隼人がしつこいから、早く連れて帰っちゃって!」
「……連れて帰るのはいいんだけど、紫音、あんた本当に…、」
「はい、ストーップ。隼人と同じような質問なら受け付けないよ。」
そう凛として言い放てば、二人は目を見合わせる。そしてどちらとも無く、呆れたように笑みを零した。