恋せよ乙女
「わかったわよ。これ以上止めても無駄みたいね。」
「無駄に挑発するなよ…ってか紫音、お前自身、安い挑発に乗るんじゃねーぞ。」
「わかってるってー。」
そんな、あたしの親みたいに心配しなくたって。ただ話をするだけ。もう、自らを危険に晒すようなことはしない。
「一応、気をつけろよ。」
「とりあえず帰るけど、連絡くれたらすぐに引き返してくるからね!」
「はいはい。じゃー、また明日ねー。」
未だ心配しまくる二人に手を振り、背を向ける。あたしが数歩歩いた後、背後にも歩き出した気配を感じ、小さく息を吐いた。
…――ああ。 緊張、するな。
今さっき、あの二人には大口叩いたけれど。一度生じた恐怖心…というか苦手意識というか、その類のものはそう簡単に払拭できないらしい。
ドキドキと早鐘を打つ胸が苦しくて、気を引き締めるためにも強く、自らの頬を打った。