恋せよ乙女
再び広がった沈黙が、あたし達二人を包み込む。綺麗なオレンジ色が差し込み始めた教室、纏わり付く静寂が無性に心地悪かった。
「……ああ。なーんだ、思い出しちゃったんだ。つまらない。」
あたしの言葉からどれくらい経ったのか、それは定かではないけれど。不意に発された鈴木さんの言葉で破られた沈黙。
「それにしても加藤さん、あなた、ただ単純なだけかと思ってたのに意外と人が悪いのね。思い出していたならそうと、昼に言ってくれれば良かったのに。」
もう、鈴木さんの表情には一切の動揺も見られない。代わりに浮かぶのは、いつか生徒会室で見たような、人を蔑むような笑顔。
紡がれる言葉も、相当イラツキが込められてるみたいだけれど、人が悪いだなんて、鈴木さんにだけは絶対言われたくない。