恋せよ乙女
「また、明日も会いに来ますね。」
「…いや、来なくてもいいけどね。」
「そんな言葉、聞こえません。
ってことで、失礼しましたー。」
バタン、と、重たい音をたてて閉まったドア。そこにもたれて、小さく息を吐く。
よかった、安心した…
確かにそんな気持ちが大きいけれど、昔、氷室さんと鈴木さんがつきあってたことも事実。
今はそんな関係じゃないって、そんな関係のままじゃ仕事はできないって氷室さんは言うけれど、鈴木さんはどうなの?
ただ表立って何もしてないだけで、心の底ではまだ想ってるかもしれない。
そんなことを考える自分のネガティブさに、思わず自嘲的な笑みがもれた。
「…?何だ加藤。今日はもう終わりか?」
不意にかけられた声に目線を上げれば、いつの間に来たのだろうか、目の前でいたずらに笑う山宮。
そしてその後ろには、今あたしの頭の中の大半を占める鈴木さんの姿があった。