恋せよ乙女
あたしと視線が絡むや否や、鈴木さんはバツが悪そうにまた顔を伏せる。その瞬間、微かに目元が光ったのはきっと、見間違いでは無いだろう。
そんな姿に、真摯で真っすぐな鈴木さんの気持ちは間違いなくあたしに届いたし、あたしだって鈴木さんが少しでも反省してくれればって、そう思っていたけれど。
実際言われてみると、そんなに実感なんて無くて。鈴木さんの涙に罪悪感なんてものも湧き出てきた上、スッキリしなくてもやもやが広がる。何より自分自身、何を言って返せばいいのかわからなくなった。
広がる沈黙に、困惑までもが混じり合う。結局どうしたいのかわからない自分自身が、1番もどかしかった。
「…――紫音。」
刹那、不意に頭上から降ってきた声に意識が引き戻される。声の主を見上げれば、穏やかな笑みがあたしを見下ろし、優しくあたしの肩に触れた。
落ち着いて、まるでそうとでも言いたそうな表情に小さく息を吐き、促されるように口を開く。