恋せよ乙女
本当にいいのか、そんなのはわからないし、正しい選択なんてきっとない。
それならあたしは、自分が思った通り、感じた通り、好きなように選んでいく。その選択に、後悔なんてしない。
「だからもう、怖いことはしないで。痛いことも、悲しいことも。それ以外ならあたし、いくらでも受けて立つから。」
鈴木さんが氷室さんを想う気持ちは本物、それはあたしも痛いほど感じている。
彼女はただ恋愛に不器用で、対抗しうる術を間違っただけ。やり方を、間違えた。
「……ほら香波。いつまでも泣いてちゃダメだよ。泣き虫の紫音がつられて、いつ泣き出すかわからない。」
「な、何言ってんですか!」
いや、別に泣きそうとかじゃないけれど。雰囲気を和ませるかのように、不意に発された氷室さんの言葉に、何故か焦って反応してしまった。そんなあたしを尻目に、氷室さんはクスリと笑う。
その態度に悪態をつこうかと口を開きかけた刹那、さっきよりも一際小さな声が耳に届いた。