恋せよ乙女

待ち合わせ場所は、思い出の場所である“Cafe de Classic ”。事前に調べておいた時間ギリギリにバスへと乗り込み、ほっと一息つく。教室からバス停まで走るのは結構重労働だな、なんて思いながら、額に滲んだ汗を拭った。

さすがに夏休みだからか、いつもより空いている車内には程よく冷房が効いている。どこかに腰を下ろそうと、運転手の後ろの席に腰掛けた。

流れる車窓を見ながら、一緒にバス乗りたかったな、なんて、ぼんやりと思う。でも、そこまで望むのは贅沢なことだと自分で思って苦笑した。まぁそれに、それができなかったのにもそれなりの理由があった訳だし。

選択する教科によって終わる時間が異なる講習、氷室さんはあたしより2時間は早く終わる。

もちろん氷室さんは、あたしが終わるまで待っててくれると言ったけれど。さすがに2時間も待たせるのが忍びなくて、その申し出は断ったんだ。

ようやく駅前に着きバスから下りると、再び纏わり付くような暑さが体中を包み込む。それがウザったくて、目的地まで一目散に駆け出した。
< 382 / 396 >

この作品をシェア

pagetop