恋せよ乙女
「……ほら、早く座って。」
「あぁ、はい。」
そう促されるように窓側に座れば、あたしに向かい合うように氷室さんは通路側に腰掛ける。
そしてテーブルの上に、アイスコーヒーとアイスカフェオレが乗せられたトレーが置かれるのを見て、氷室さんの相変わらずな手際の良さに良い意味で辟易した。
だってほら、店内を見回すあたしを見つけて、すぐに飲み物を注文して。おまけに、トレー片手にあたしを連行して今に至る訳だから、やっぱり普通にスゴイ。
「今日はカフェオレにしてみたんだけど……、飲める?」
「あ、カフェオレなら飲めます。それに今日は、スッゴくカフェオレな気分だったので嬉しいですよー。……っていうか、また奢らせてしまって申し訳ないです。」
「いや、呼んだのは僕だしそれは気にしなくていいけど。カフェオレの気分って何。どんな気分?」
カフェオレのグラスを差し出されながらの問いに、我ながら半分意味不明な返事をしてしまったのは確かだけれど。
ふざけたあたしの言葉にまさかそんな問いが返って来るなんて思っていなくて。小さく笑う氷室さんにつられ、あたしからは苦笑が漏れた。