恋せよ乙女

「まともに受け止めないでくださいよー、今のは。」

「ははっ、わかってたけど、ついね。」


わかってたけどつい、とか、わかってるなら普通にやめてくれればいいのに。

笑う氷室さんを見つめながらグラス内をストローで混ぜれば、カランと、氷がぶつかり合う涼しげな音が響いた。

それを合図にするかのように、あたしがゆっくりと口を開く。


「……で、氷室さん。わざわざ今日、呼び出してくださった理由は何ですか?」


珍しく、氷室さんから。
嬉しいのは当たり前。けれど、何かあたしに用事があってのことだと、そう考えるのが妥当だろう。


「あぁ、うん。別にたいした用事じゃないんだけど、ただ紫音に一つ渡したいものがあって。」


あたしの問いに、氷室さんはそう言って優しく笑った。
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